【7時間目の授業は心理です】

思春期~青年期の方をターゲットに心理学をお話ししていきます。

【#31トラウマについて】トラウマを理解するために

心の中で・・・「起立、礼、着席」

 

みなさん、お疲れ様です!心理カウンセラーのルンタです。

それでは今日も短時間で解説をはじめますよ~

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さて、今回は”トラウマ”についてお話していこうと思います。

以前の記事でも少し触れましたが、トラウマは非常に難しい問題です。トラウマについての正しい知識を理解して頂きたいので、どうぞ最後までよろしくお願いします。

luntacop.hatenablog.com

 

まず、トラウマの定義ですが・・・

個人では対処できないほどの圧倒的な恐怖体験・ストレス体験によりもたらされる心の傷」と言えます。

この傷は一生をかけて残り続けると言われています。それはまるで刺青のように、心に生き度刻まれると、それを消し去ろうとすることは困難です。

言い換えるなら、脳だけでなく、体も記憶している状態なんです。

 

トラウマになりうる原因は人それぞれですが・・・

①死を意識するほどの恐怖体験

②激しい暴力・暴言

③長時間にわたる苦痛(精神的・肉体的問わず)

④性的な暴行(同意のない性行為)

⑤突然の死別・凄惨な状況に居合わせたり、目撃すること

⑥災害等に被災すること

大まかに挙げると、以上のような原因が心に大きく傷をつけてトラウマになるとされています。

 

ここで言う「傷」とは、科学的に言うと「超過剰なストレス反応」となります。

人間の脳は、「自己保存」の本能があるため、自分を守るために自己防衛反応を無意識のうちに様々に出してきます。少しでも長く生きて種を残そうとするのは動物であれば、誰もが持っている本能です。

そのうちの一つに、「自分にとっての脅威(大きなストレス)から身を守る」というものがあるのですが・・・

脅威から身を守るために「また同じような脅威が起きた時に、すぐ反応できるようにいつまでも覚えておこう。そうしないと次は死んでしまうかもしれない」と脳は働き始めます。

 

その際に、この脅威(大きなストレス)をまるで指名手配のようにして、脳は感覚受容器官(五感)すべてに指令を出し、「同じような脅威・恐怖体験を感じ取ったら、すぐにこの記憶を思い出して、逃走・闘争反応に備えるべし」と連絡を回します。

そのため、①同じような光景を見たり、②トラウマがあった時の状況に近いことが起きたり、③その時になっていた音、④その時の匂いなど、これらすべての感覚で指名手配の顔にフィットすると・・・

連絡が一気に脳に集まり、「命の危険だぞ!」とシグナルを出します。その際、脳は同時に「フラッシュバック」という形で、本当に危険であるということを伝えるために、意味記憶と感覚記憶をあわせた、生々しく正確な記憶を引き出します。

ちなみに、「意味記憶」とは脳の中にある記憶のことで「エピソード記憶」も含みます。「感覚記憶」は感覚器官を通して記憶したいわゆる”体の中”の記憶のことです。

トラウマがある人は、このように「自分で自分を守ろうとする本能」が働くのですが、この本能が働く際のフラッシュバックという記憶の呼び戻しで、ものすごいダメージを受けます。

なぜなら、恐怖体験の焼きましだからです。

たしかに、生存本能を守るために脳が働く最大限のことなのですが、人間は他の動物より、知性と膨大な記憶力があるがゆえに、このトラウマ体験を思い出すことは相当の苦痛が伴うのです。

 

トラウマ体験が思い出されたら、次は行動を起こさなくてはなりません。それが先ほどちらりと上げた、「逃走・闘争反応」です。

これらは、トラウマを引き起こすストレス源に対して、①逃げるのか、②闘うのかを迫る反応です。どちらも交感神経が優位になり、すぐ行動できるよう呼吸が浅くなり、消化器官の活動は抑えられ、瞬発的な筋肉に緊張が走ります。

しかし、強いトラウマがあるとこの①・②だけでなく、第三の③凍結反応があるとされています。凍結反応は、強いストレスにプラスして、「もう逃げても意味がない・逃れられない」という圧倒的な絶望感が体を支配して、動けない・動いても仕方ないと判断して、凍り付いたかのように硬直することです。

以上をまとめて、①逃走=Flight、②闘争=Fight、③凍結=Freezeの3Fと呼ぶこともあります。

 

 

ということで、トラウマ体験があると体も心も一気に3Fモードに切り替わり、心身ともに構えてすさまじく疲弊してしまうのです。

東日本大震災の時、津波緊急地震速報の音がトラウマになって、恐怖だった記憶がよみがえり辛かったという人は、数えきれないほどいたと思いますし、現地の被災者の方は今もこのフラッシュバックに苦しめられています。

フラッシュバックの厄介な所は、夢の中でも発生してしまうことです。寝ている時の夢想状態で、現実に起きていなくても、脳が錯覚して実際におきていると判断してしまえば、フラッシュバックを起こして夜驚を起こすこともあります。

 

こう見れば見るほど、トラウマはもはや心の傷どころではなく、心の刺青だと思ってしまうのです。

今回は取り上げませんが、トラウマの治療方法は存在します。

しかし、簡単なことではありません。一度焼き付いた記憶と体の反応をクリーンにすることは相当の時間がかかります。

当然です。脳が全身を使って、自分を守るために命がけのシグナルを出すようにメカニズムを組んでしまったのですから。

 

災害や大切な人の急な死別は防ぎようがありません。ですが、事前に防げるトラウマがあります。

それが最初にも挙げましたが、前々回の記事の「虐待」です。

虐待を受けた人は、例外なく、程度に差はあれど必ず何かしらのトラウマを抱えています。

それは普段の日常では顔を覗かさないことが多いため、他人には周知されにくいのですが。それでも時折、自分の心の中で顔をのぞかせます。

この自分の中だけで、トラウマと戦うこと。これってものすごくしんどくてつらいんです。

でもなかなか共有できない。他人に打ち明けられない(レイプなどの性被害ならなおさら)。これがどれだけ苦しい事か。

 

そのため、現代では同じトラウマを持つ人通しの交流会や自助グループというコミュニティなどが立ち上がって、活動していることがあります。

当事者同士でしか、理解できないこともトラウマにおいては無数に存在すると思います。そういうコミュニティに参加することは、とても大切なことだと私も思います。

 

皆さんの周りにも、実はトラウマを抱えている人は沢山います。声に出さないだけで。そうした人たちに何かをしてあげて欲しいという訳ではありませんが、トラウマを誰かに与えないかだけは自分で実践できると思います

虐待的な関わりをしていないか、パワハラやセクハラもトラウマになりえます。

 

負の連鎖を生み出さないように、新しいトラウマを生み出さないために、我々が出来ることをしていきましょう。

 

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それでは今回はここまで!

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@LuntaCOP

 

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